「アベノマスク」が登場し話題に!朝ドラ『おむすび』で描かれるコロナ禍の日常
橋本環奈主演のNHK連続テレビ小説『おむすび』第113回の放送で、視聴者の間で大きな話題となったのが神戸市役所職員・若林さん(新納慎也)が着用していた「アベノマスク」でした。コロナ禍初期を描く場面で、理髪店を営む聖人(北村有起哉)が不安を抱えながら若林さんに相談するシーンで登場したのです。
当時を思い出した視聴者からは「若林さん、まさかのアベノマスク!さすが市の職員w」「マスク小さいけどもしかしてアベノマスク?」「若林さんの職種と生真面目さを表現するのにぴったりだわ」といった声が次々とSNSに投稿され、X(旧ツイッター)では「アベノマスク」がトレンド入りするほどでした。
この演出は、2020年4月から安倍政権が不織布マスク不足解消を目的として全世帯に2枚ずつ配布した布製マスクを再現したもので、当時「アベノミクス」になぞらえて「アベノマスク」と呼ばれていたことを鮮明に思い出させる細部への気配りでした。
若林さんが聖人に「理髪店や美容室は社会生活を維持するために必要な業種っちゅうことで営業を続けてええそうです。せやけど、感染予防はしっかりお願いしますよ」と説明するシーンは、コロナ禍で多くの業種が営業自粛を迫られる中、「社会に必要な業種とは何か」を問いかけられた当時の混乱と不安を思い起こさせます。
一方で視聴者からは「わざわざ訪問しなくても電話で済んだ話では」「緊急事態宣言下で電話で済むような要件に対応してくれる暇な市の職員っておったんかいな」といった疑問の声も。また「コントに持って行く?」「リアリティを追求するのもナンセンスだとは思いますが、ストーリーに説得力が欲しい」といった小道具への拘りよりもストーリー性を重視すべきとの意見も見られました。
しかし「ほんの数年前のことをツッコミどころ満載でドラマに盛り込むって?」「朝ドラでは、例えば戦時中の生活は視聴者はあまり知らないので、ストーリーを理解できるようにそれらを説明する場面を多く入れる必要があるけど、コロナ禍はつい最近の事なので、当時の様子は視聴者はみんな知っているはずなのに、このドラマでコロナ禍の当時の状況を細かく描く必要があるのだろうか」という疑問も投げかけられています。
『おむすび』はこれまでも阪神・淡路大震災や東日本大震災など、平成の重大な出来事を描いてきましたが、コロナ禍という誰もが経験した直近の記憶を朝ドラでどう描くかという新たな挑戦に直面しています。アベノマスクのような象徴的なアイテムの登場は、視聴者の記憶を呼び覚ますきっかけとなる一方で、その表現方法については様々な意見が交錯しているようです。
朝から見て「暗い気分になる」という声もありますが、あの時期を生きた私たちにとって、コロナ禍の記憶を朝ドラという国民的番組でどう描くべきなのか、視聴者それぞれが自分の経験と照らし合わせながら考えさせられる機会にもなっているのかもしれません。

緊迫した医療現場の「黙食」シーン、視聴者の記憶を呼び起こす
橋本環奈主演のNHK連続テレビ小説『おむすび』第113回の放送では、コロナウイルスの感染拡大を描くシーンのなかで、いよいよ作品のテーマである”食”の描写にも変化があらわれました。特に印象的だったのは、患者さんに提供する食事を結(橋本環奈)たちが”黙食”するシーン。誰一人話すことなく試食し、マスクをつけてから感想を述べる様子は、当時の緊張感を鮮明に映し出しています。
管理栄養士の柿沼(しまずい香奈)が「どうですか?」とどかしそうに尋ねる姿には、コミュニケーションさえも制限された状況下での医療従事者のもどかしさが表現されていました。SNSでは「距離をとって全員前を向いて黙食…そうだあの頃はそうだった…」という声が寄せられ、多くの視聴者の記憶を呼び覚ましました。
さらに、レッドゾーンを担当する医師・看護師たちが、間隔を空け同一方向を向いてお弁当を食べるシーンも放送されました。しかし、このシーンにはリアルさを疑問視する声も多く寄せられています。「病院で働いている者ですが、全員同じ物を食べるなんて危険管理的にありえない」「食中毒でも起きたら一気に医療崩壊する」といった医療関係者からの指摘も。
また、病院で結が患者向けの献立提案をするシーンや、患者一人ひとりに手書きのメッセージを添えるといった描写に対しても「あれを見ていると、調理部側の管理栄養士はなにも考えず献立立てて調理しているみたいに思えてくる」「患者さんの食事に手書きのお手紙?やっぱり暇なんでしょうね…」と、現実の忙しさを知る医療関係者からは疑問の声が上がっています。
一方で、コロナ禍の医療現場での食事事情については「コロナ患者さんて、喉がすごく痛くて唾も飲み込めないくらいだったはず。栄養面も大事だけど、とりあえず食べやすい調理にするほうがよかったのでは?」「当時コロナ感染の入院患者さんは、高熱、喉の炎症や味覚障害で、食欲どころではなかった人だったはず。比較的軽症者はホテル隔離だった。それが、消化のよくないゴボウの入ったけんちん汁が食べられたんだろうか?」など、症状と食事内容のミスマッチを指摘する声も。
「栄養士さんたちはのんびりゆったりしてるよね。後半、配膳のお手伝いとかしてたけど、ぜんぜんテキパキしてなくて緊迫感や悲壮感、緊張感がゼロ」という指摘からは、コロナ禍の医療現場で「戦場」と描写されるほどの緊張感と、管理栄養士たちのシーンの温度差に違和感を覚える視聴者の声が伝わってきます。
それでも、「あのお手紙は手書きの時点であり得ないと思ったし(せめてパソコン)、暇だね、としか思えなかった。だけど、コロナのために入院している孤独とか不安感、恐怖感で一杯の患者があれを見たら泣いてしまうだろうな~」という意見もあり、医療現場のリアリティと心情描写のバランスの難しさがうかがえます。
コロナ禍での”黙食”シーンは、まだ記憶に新しい私たちの日常を映し出す鏡となりました。それは時に違和感を覚えさせるものの、あの時期のコミュニケーションの制限や食事という最も基本的な行為さえも変化せざるを得なかった状況を思い出させる、象徴的な場面となったのではないでしょうか。
「ラップ」一枚の距離感—おむすびで描かれる家族間のコロナ対策の切なさ
NHK連続テレビ小説『おむすび』第113回では、主人公・結(橋本環奈)が自宅でおむすびを握るシーンが視聴者の心に強く残りました。病院で働く結が、我が子の花(宮崎莉里沙)のためにおむすびを作ろうと手を濡らしたものの、ふと思いとどまりラップを手にするという何気ない行動に、コロナ禍での家族の距離感が象徴的に表現されていたのです。
結は直接コロナ患者と接触しているわけではないものの、「念のため」と家の中でもマスクをつけ、家族と距離を取って食事をしていました。そんな結がおむすびを素手で握ることにもリスクを感じる様子は、医療従事者の家族が抱えていた不安や葛藤を鮮やかに映し出しています。
花は結が握ったおむすびを一口食べると、いつもと違う何かを感じ取ったのか一瞬下を向いたあと、「おいしい!」と笑顔で伝えます。この何気ないやりとりに、SNSでは「病院で働いている結の家での行動に身につまされて泣いてしまった」「今までは手で直に握っていたおむすびもラップを使うようになる描写が切ない…」「あぁ…おむすびにも距離が。ラップ一枚の距離」といった共感の声が寄せられました。
しかし一方で、この描写に違和感を覚える視聴者の声も少なくありませんでした。「むむ、コロナ禍以前から、10年前か?いやもっと昔から、おにぎりは素手で握らずラップで握りましょう、と言われてきたかと思います。細菌感染予防の為に」「我が家でも、子供のおにぎりは必ずラップを使って握っていたのを思い出しました。なので20年以上前の昔からです」「素手でおにぎりなんていくら家族へとは言え、平成1ケタあたりで誰もしなくなったような。結は栄養の専門家なのに素手でおにぎり…大いに疑問です」といった指摘も相次ぎました。
また、これまでの結と花の親子関係の描写の薄さを指摘する声も。「これまで結と花って特に仲良くなかったし、子育てシーンも触れ合いシーンもほとんどなかった。でもコロナ編になって母子が触れ合えないシチュエーション撮りたいもんだから、急に『ママおかえりー!』とか『ママのおむすび食べたーい』とか花に言わせてるのが嫌」という視聴者の声からは、感動的なシーンを作るための唐突な親子関係の変化に違和感を覚える人も少なくないようです。
さらに「あんな海苔も巻いてないおにぎり、子供が食べて『美味しー!』とか言うわけあるか?」と、内容にも疑問を呈する声も。こうした意見からは、視聴者が感じるリアリティとドラマの演出の間にあるギャップが浮き彫りになっています。
ドラマでは結が家族と離れて食事したり、マスクを着用したりする姿も描かれましたが、「職場では食事の栄養価にあれほど拘るのに、家族の食事は唐揚げと塩握り飯だけ?」と、管理栄養士としての結の一貫性のなさを指摘する声も。「この主人公は他者が作る食事には細かく指示するけど、自分が作る食事は手抜きが甚だしいですね(笑)」といった皮肉まじりのコメントもみられました。
ラップ一枚を通して描かれた家族の距離感。震災時の冷えたおむすびと今回のラップおむすびを重ねる演出意図に対しても、「震災の冷えたおむすびとつなげたかったからラップおむすびのエピをねじ込んだんでしょうけど『おいしい!』というセリフで良かったんでしょうかね?」と疑問視する声も。
結局のところ、ラップを使ったおむすびという日常的な食べ物を通して、コロナ禍における家族の距離感を表現しようとした試みは、視聴者それぞれの経験や記憶と照らし合わされ、様々な受け止め方をされているようです。ドラマと現実、演出とリアリティの狭間で揺れる『おむすび』の「ラップ一枚の距離」は、私たちが経験したコロナ禍の複雑な記憶を呼び起こす契機となったのかもしれません。
『おむすび』の「視聴率」推移から見る朝ドラの新たな挑戦と課題
橋本環奈主演のNHK連続テレビ小説『おむすび』の視聴率が注目を集めています。3月11日に放送された第112回の平均世帯視聴率は12.0%(関東地区)、平均個人視聴率は6.5%という数字が出ています。これまでの朝ドラと比較すると決して高くはない数字ですが、視聴者からは「最近、12%でも『上がった』と思えてしまう感覚」「以前は13%ですら高いと思えたおむすびの視聴率。最近、12%でも『上がった』と思えてしまう」という声が上がるほど、『おむすび』の視聴率推移には独特の受け止められ方があるようです。
瞬間最高視聴率は初回放送時の16.8%だったことを考えると、放送を重ねるにつれて視聴率が低下していることが分かります。SNSには「あと二週でコロナも収束し、結のメニューのおかげで入院患者みぃ~んな元気になると思う」「残り3週の時点の他の朝ドラ。『半分、青い。』は、ヒロイン鈴愛が離婚した律と再会し、そよ風の扇風機の開発をスタートする。『舞いあがれ!』は、ヒロイン舞は大学の先輩刈谷と再会し、空飛ぶクルマづくりを手伝うことになる。『おかえりモネ』では、ヒロイン百音は気仙沼に帰ってきている。幼馴染の亮と妹の未知の間にようやく気持ちが通う。クライマックスに向けて盛り上げに掛かっている。『おむすび』はなだらかに下っている感じ」といった、最終回に向けての盛り上がりを疑問視する声も寄せられています。
また、「もしかすると視聴率は、最終回を迎えるまで右肩下がりってこともあり得るのかも」「語弊はあるかもしれないが、10しか知らなければ、10で満足するけど、100、1000を知っていれば到底満足できないどころか、不満しかない」という声からは、朝ドラへの期待値と現実のギャップが透けて見えます。
視聴率低下の要因として視聴者からは、「震災だのコロナだの取り出し、善意の標本、善意は辛い、善意はこうあるべしなんて学校の国語、学校の道徳みたいなものをやろうとしてますね」「なにか教え、押しつけようという傲慢が局の底にあるんですよ。ドラマによって視聴者に喜んでもらおうという基本を忘れている」という番組の姿勢に対する批判も。
特にコロナ禍を描く必要性については「先日同じ局の『水平線のうた』というドラマを見ました。震災をテーマにした、実写も挟みながらもドラマとしての出来が素晴らしかった。震災についてまた考えさせられたし、ストーリーが本当に良くて最後は泣けました。あのくらいのドラマを作れないものかと思ってしまいました」「朝からコロナ禍を見て暗い気分になりますよね…あまり思い出したくないというか」「おむすびは暗いコロナ禍まで突入せずに平成で終われば良かった」といった意見も多く、朝の時間帯に重いテーマを扱うことへの疑問も投げかけられています。
一方で「正直、12%なんてよくとれたね、って思う」という声もあり、朝ドラというフォーマットの限界や、現代を描く難しさを感じさせる反応も。「このドラマでコロナなんてまともに扱えないんだから、平成までで終わりにして、その分を学生時代とか、社会人の苦労とか栄養士の話をちゃんとやれば良かったのに」「そんなに主役の撮影時間が取れなかったのでしょうか」といった制作面への疑問も投げかけられています。
さらに、管理栄養士という主人公の職業設定についても「正直、栄養士を主役にするには無理筋のストーリーのオンパレードだよね。だから細く短いエピソードの繰り返しで全然、物語自体が成長しない」「失礼承知で言うけどあの頃、管理栄養士に出来る事はそれほどないと思いますよ。ドラマの根幹になるほどは」「根本的に物語の設定まちがってない?」という指摘もあり、ドラマの根幹に関わる疑問も多く寄せられています。
『おむすび』の視聴率推移は、朝ドラという国民的番組の新たな挑戦と課題を映し出していると言えるかもしれません。コロナ禍という誰もがまだ生々しく記憶している出来事を描くことの是非、管理栄養士という職業を主軸にしたストーリー展開の可能性、そして何より「朝」に放送されるドラマとして視聴者にどのような体験を提供すべきか—これらの問いは、今後の朝ドラ制作においても重要な課題となることでしょう。
残り2週間余りとなった『おむすび』。「もう視聴率も上がりそうにないな。こんな壊滅的で悲惨な状態のままバトンを渡される『あんぱん』はたまったもんじゃないだろうね」という声もある中、最終回に向けてどのような展開を見せるのか、そして次回作『あんぱん』にどうバトンを渡していくのか、注目が集まっています。
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