金曜日の解決劇から読み解く『おむすび』の功罪 — 次の朝ドラに伝えるべきこと

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震災で失った真紀と瓜二つの詩、歩との出会いが心を開く鍵に

朝ドラ「おむすび」の終盤、視聴者の心を揺さぶったのは、身元不明の少女・田原詩との出会いでした。結(橋本環奈)が勤務する大阪新淀川記念病院に栄養失調で運ばれてきたこの少女は、震災で亡くなった歩(仲里依紗)の親友・真紀にそっくりな顔をしていました。マスクを外した瞬間の結の衝撃の表情が、視聴者の胸に刺さります。

「詩という存在によって、結と歩が解放されていない思いに決着をつける」という脚本家・根本ノンジさんの意図通り、詩は米田姉妹の過去と未来を結ぶ重要な役割を担っています。実は真紀役と詩役は、女優・大島美優さんが一人二役で演じていました。当初から一人二役の構想があったわけではなく、制作統括の真鍋斎さんによれば「米田姉妹の最後に”真紀ちゃん”を絡めて物語ができないだろうか」というところから生まれたキャラクターだそうです。

詩は生きる意味を見失い、食事を拒否していました。管理栄養士として奮闘する結の熱心な「食べり」の声掛けも通じず、ある金曜日、結は一計を案じます。「真紀ちゃんにそっくり」という理由で詩に特別な感情を抱いていた歩を病室に連れてきたのです。

冷凍ブドウを差し出す歩。詩は最初こそ警戒していましたが、カリスマギャルの歩の魅力に少しずつ心を開き始めます。「生きる意味なんてない」と言っていた詩が、凍らせたブドウをひとつ口に入れる場面は、小さな変化の始まりを象徴しています。

詩が退院する日、歩は名刺を渡します。「困ったことがあったら、いつでも連絡してきてね」という言葉に、視聴者からは「これは心に刺さる」という声があがりました。名刺を差し出した瞬間、歩の頭によぎったのは間違いなく真紀の姿。「真紀ちゃん」と呼びかけそうになるのを必死に堪える表情に、歩の心の葛藤が表れていました。

この物語展開について、制作統括の宇佐川隆史さんは「詩の瓜二つの顔が重要なのではなく、結と歩が関心を抱くきっかけにすぎない」と説明していますが、視聴者からは「なぜ必要だったのか?エピソードが足りなくなったから?」「この子の問題は食べられないという上部のことではなく、生きる意味が見出せないってことだよね。そこが解決したように思えない」といった疑問の声も上がっています。

確かに詩のストーリーは、金曜日になると一気に解決してしまうという「おむすび」特有のパターンで終わってしまった感は否めません。しかし、大島美優さんの演技の素晴らしさは多くの視聴者が認めるところ。「真紀のときには出番も少ないですし、純粋に”歩にとっての憧れ”としてシンプルにアプローチしたと思うんです」と真鍋さんは語りますが、詩役として再登場した際には「前回以上に台本を読み込んで、どう演じようかと非常に深く考えてきた」そうで、「映像で見ても結や歩に引けを取らない表現」だったと賛辞を送っています。

視聴者の心に残るのは、やはり詩と歩の交流シーン。仲里依紗さんの演技は「少しグッときた」「全体の流れがまともだったら涙したかもしれないシーン」と評価する声もありました。一方で「生きる意味を見出せない子供に『私は詩ちゃんに生きていて欲しいよ』なんて言葉がささるわけない」「退院の時に歩が渡した名刺。あれは刺さると思う」など、結より歩の対応に共感する声も多く聞かれました。

詩と真紀の存在は、「おむすび」というドラマの中で姉妹の絆を再確認させる鏡のような役割を果たしています。震災で失った大切な人に似た少女との出会いが、米田姉妹の心の傷を癒し、新たな「結び」につながっていく—。それは視聴者にとっても、「人と人を結ぶ」というドラマのテーマを再認識させる物語だったのかもしれません。

高校時代の憧れ風見先輩、書道系インフルエンサーとして意外な再登場

朝ドラ「おむすび」第120回、最終週を目前にした放送で、視聴者を驚かせたのは高校時代の書道部の先輩・風見(松本怜生)の突然の再登場でした。結(橋本環奈)の同僚が興味を示していた「今、はやっている書道系インフルエンサー」の姿が、スマホの画面に映し出された時、多くの視聴者が「まさかの風見先輩」「懐かしい」と驚きの声をあげました。

風見先輩は結が高校時代に淡い恋心を抱いた書道部の先輩。「書道なら~」という独特の言い回しで、真面目な書道部員でありながらも憂いを帯びた魅力的な存在として描かれていました。そんな風見先輩が「風見亮山」という名前で、視聴者のどんな悩みも漢字一文字の書で全部答えてしまうという、ちょっとチャラい「書道系インフルエンサー」として再登場したのです。

この意外な展開について、制作統括の宇佐川隆史さんは「大竹は視聴者の皆さんに支えていただいたキャラクターだと思っていて、ぜひもう一度登場してもらいたかった」と語っています。風見先輩の将来像については「もしかしたら大成して大河ドラマの題字を書くぐらいの書道家になっているかもしれない」というアイデアも出たそうですが、最終的には「書道系インフルエンサーになるほうが風見先輩らしい」という案に決まったとのこと。

さらに風見先輩の登場シーンの後には、「俺んちにバリでかいスズメバチの巣があるっちゃけど、見にこん?」というトンチンカンな発言でSNSでトレンド入りまでした大竹部長(桑野颯太)も「大竹スペシャルハニー」という養蜂場を営む姿で登場。宇佐川さんによれば「スズメバチの巣から蜂蜜は採れないのですが、そこから大竹は蜂に興味を持ち、養蜂家となった」という設定だそうです。

この唐突な再登場に、視聴者からは「風見先輩懐かしいね。チャラくなって登場だったけど忘れてたあの頃の場面を思い出した」「風見先輩には笑った…あまりのバカバカしさに。どうせならこういった『ちむどん級』、いや『超ちむどん級』のバカバカしさに振り切ればよかった」といった反応が寄せられました。一方で「まさか風見先輩がチャラくなるとは思わなかった」「墨が薄いのは何か意味があるんですか?」と違和感を覚える視聴者も。

風見先輩の再登場の理由について、真鍋斎さんは「結が高校生のときに関わった人たちの『その後』をどう見せていくか、スタッフ間で話し合ったときに色々とアイデアが出てきました」と説明しています。また宇佐川さんは「『おむすび』は、どの登場人物も『自分の人生の主人公』として生きていると、私たちは考えて描いてきました。限られた尺の中で全員の『その後』を描けるわけではないので、その代表として風見と大竹に再登場してもらいました」と補足しています。

しかし、視聴者からは「あまりにも唐突すぎる」「ただ単にそういう設定にして結がその動画を見て、そうだ詩のことを歩に頼もうと気づかせるためだけに無理矢理話を繋げた感じに見える」「どうでもいいもの回収して」といった厳しい声も。「エピソードが足りなくなった、収録してあるストーリーだけでは尺が足りなくなったということでしょうね」という憶測も飛び交いました。

それでも「本編がつまんねーからこれくらいの癒しはかまわん(特にスズメバチ先輩)」「ドラマを観ていて疲れる朝ドラだからこそ、こういう笑える場面は大事」といった肯定的な意見もあり、登場人物の「その後」を見せることの意義は確かにあったようです。

風見先輩の再登場は、「おむすび」というドラマが目指した「人と人との結び」を象徴するものでもありました。そして結にとっては、高校時代の思い出と現在の自分をつなぐ大切な存在。風見先輩の出現が結に「詩のことを歩に相談しよう」という閃きを与えたことは、最終週に向けての重要な伏線となりました。

最終週を前に、視聴者の間では「風見先輩の再登場のように、さっちん達のその後も観てみたい」「もう1回、小手さんが出てくるような気がする」と期待の声も上がっています。朝ドラ「おむすび」がどんな「結び」方で終わるのか、最後まで目が離せません。

患者の心を開く鍵は「食べり」?管理栄養士としての結の成長と葛藤

朝ドラ「おむすび」のヒロイン・結(橋本環奈)が管理栄養士として患者と向き合う姿は、ドラマの中心的なテーマです。特に印象的なのは、「食べり」という博多弁の言葉を連発しながら患者に食事を勧める姿。しかし、この「食べり」の連発に対して、視聴者からは「イライラする」「うざい」という声も多く聞かれました。

身元不明の少女・詩(大島美優)との関わりにおいても、結の管理栄養士としてのアプローチは賛否両論でした。「生きる意味なんてない」と言い、食事を拒む詩に対して、結は「ラーメンがダメならうどんはどうかな」「私は詩ちゃんに生きていて欲しいよ」などと声をかけます。しかし視聴者からは「それって以前もやったプランがダメならゼリーはどうかなと一緒。詩ちゃんは人生に絶望し心がささくれ立っているから食べないの。好みで食べたくないって言ってないんですよ」「生きている意味なんてない、死んだってかまわない、と思っている子に、管理栄養士なんかに生きて欲しいと言われたって響くわけはない」といった厳しい意見が寄せられました。

また「見れば見る程にこの病院に必要なのは、何にでもしゃしゃり出る口の利き方を弁えない管理栄養士ではなく、真っ当な臨床心理士と看護師」「無理に管理栄養士が患者に介入する設定が違和感しかない」という指摘も。結局、詩の問題を解決したのは結ではなく歩(仲里依紗)だったことも、結の管理栄養士としての力量に疑問符を投げかける結果となりました。

「おむすび」における管理栄養士の描写については、「もう少し管理栄養士になる過程でどう頑張ったかみたかった。知り合いの栄養士の方でも管理栄養士になるのは勉強が大変だったようなので。そこがすっぽり抜けていたのが残念です」という声もありました。確かに結が管理栄養士の資格を取得するまでの苦労や勉強の過程はほとんど描かれず、いきなりベテランのような振る舞いをする姿に違和感を覚える視聴者も多かったようです。

一方で、結の管理栄養士としての成長を評価する視聴者もいました。「ラーメンの盛り付けおいしそうだった」「管理栄養士の一般的な仕事ぶりより、人間的な関わりを大切にする結の姿勢は感動的」といった意見も。また「栄養士という仕事をクローズアップした珍しいドラマで、その点は評価できる」という声も聞かれました。

それでも全体としては、「管理栄養士を題材にした時点で、初めから不評となることは決まっていた」「管理栄養士を題材に半年もストーリー展開するには、話が膨らまない」という厳しい評価が目立ちます。結の「食べり」の連発も「『食べり』連呼で募ったイライラが、ハイタッチ『イエーイ!』で爆発した」「今日の『食べり』連発は違和感あります」と、視聴者の反感を買う結果となりました。

また、病院でのラーメン提供についても「ラーメンが特別食として病院食では現実にはあるけど、ただラーメンは患者のもとへ来るときはスープはぬるぬるで、麺はのびのびなんだけどな」「結が直々に配膳するとは、ひょっとして詩一人のため?」「スープがなくなって麺が干からびるほど放置するとはこの病院は何日ラーメンを放置していたのかな?」と現実との乖離を指摘する声も。

しかし、結の管理栄養士としての日々の奮闘は、明るく前向きに生きる彼女の人柄を象徴するものでもありました。「ギャル魂」を胸に、どんな困難にも前向きに立ち向かい、患者の心と体の栄養を考える結の姿は、視聴者に勇気や元気を与えたことも確かです。

視聴者からの厳しい意見はあれど、結は最後まで自分らしく、患者と向き合い続けました。ドラマの冒頭で語られた「どんなときでも自分らしさを大切にする”ギャル魂”を胸に、栄養士として人の心と未来を結んでいく”平成青春グラフィティ”」というテーマは、結の管理栄養士としての姿勢に確かに表れていたのです。

最終週に向けて、結がどのように自身の職業と向き合い、「おむすび」として人と人とをどう結んでいくのか。管理栄養士としての彼女の最後の姿に、視聴者の注目が集まっています。

週ごとの問題解決パターン、視聴者が求めていた本当の「結び」とは

朝ドラ「おむすび」の物語展開には、視聴者から繰り返し指摘される特徴的なパターンがありました。それは「週初め問題勃発からの週末に結の活躍とギャルが問題解決」というワンパターンな流れです。このパターンは、詩(大島美優)のエピソードでも例外ではありませんでした。

視聴者からは「今週も安定してスベったなあ。『昔の友人にただ顔が似てるだけ』の娘さんに、おねいちゃんは思い入れを持てるはずもなく、妹は両親を喪ったばかりなのに『おいしそうなもんさえ出しとけば』と『食べり食べり』と強要。金曜日になったら児相に引き継いではいサヨナラ。一貫して雑」「また出ましたね、食べない患者が金曜日の回で突然食べるようになるパターン。見飽きました」「金曜日に1テーマを完結させる謎ルールは今後はやめた方がいい」といった厳しい声が上がりました。

この展開の繰り返しに、一部の視聴者は「カムカムで五十嵐が吠えてた『毎回同じ立ち回り!毎回同じ解決!そんなもの見て喜ぶバカのために毎回毎回同じ内容!』ってセリフを思い出す」とまで言及。「おむすび」の脚本についての不満が噴出することとなりました。

「おむすび」の脚本家・根本ノンジさんの作品について、「ストーリーや脚本自体は悪くないと思います。良くないのはストーリー展開のリズムです。日常の小さな問題解決とか、コロナとの闘いの顛末を描いた壮大なテーマの各エピソードが全て同じ尺な1週完結で描かれていたので、全体としてのバランスが崩れてしまいました」という分析的な意見もありました。

また「『なんでこれをダラダラ続けるのかな?』と思えば、『えっ?こんなに簡単にナレーションだけで終わらせるの?』という繰り返し」「誰が主役かわからない。橋本環奈はナレーションのように出来事を眺めているで、脇役がすべて解決」という声も。「ドラマとしては粗雑な脚本でひどい出来だった」という厳しい評価が目立ちます。

そんな中、視聴者が注目したのは仲里依紗演じる歩の存在感でした。「このドラマで改めて浮き彫りになったのが、ヒロインの姉である『歩』を演じた仲里依紗さんの人気の高さ」「仲里依紗さんが出ていなかったら、この『おむすび』の視聴率は10%切っていた」「今日の仲里依紗さんの演技は良かった」など、歩を演じる仲里依紗への賞賛の声が多く寄せられました。

「もう『おむすび』の”準ヒロイン”といっても過言ではなかった仲里依紗」と言われるほど、彼女の存在感は際立っていました。「ヒロイン不在の間は仲さん演じる歩を中心に物語が動きましたが、この展開に《もうこのまま里依紗ちゃん主役で》という意見も出たほど」と芸能ライターのエリザベス松本氏は語っています。

実際、視聴者からも「橋本さんと仲さんのWヒロインにするべきだった」「あんなひどい脚本や台詞でも、それなりに魅せる芝居に仕上げてくる緒形直人さん、仲里依紗さんって(それもその直前までのグダグダ空気をスパッと切って)、ものすごい俳優さんなんだなー」といった声が聞かれました。

一方で「批判の中にはとにかく橋本環奈を下げるために仲里依紗を不自然に持ち上げているのが結構多かった」という指摘もあり、視聴者の反応にも様々な立場があったことがうかがえます。

では、視聴者が「おむすび」に求めていた本当の「結び」とは何だったのでしょうか。おそらくそれは、予定調和的な週完結の物語ではなく、登場人物たちの心情や葛藤をじっくりと描いた深みのあるドラマ展開だったのではないでしょうか。

「脚本家としても、当初意図したドラマとは違う方向へ進んでしまって、不本意だったでしょう」という声もあるように、「おむすび」は当初の構想とは異なる道を歩んだ可能性もあります。パワハラ騒動などの影響で、ヒロイン橋本環奈の「”パワハラ疑惑”まで報じられ、結局、視聴者の心を掴めないまま幕を閉じることとなりそう」という状況は、制作陣にとっても予想外の展開だったかもしれません。

それでも最終週を前に、多くの視聴者は「おむすび」の結末に関心を寄せています。「最終週は橋本ワールド全開の週になりそう」「来週がもう最後か」という声からは、批判的な意見を持ちながらも、最後まで見届けようとする視聴者の姿が浮かび上がります。

朝ドラ「おむすび」がどのような「結び」を見せるのか。視聴者が求める本当の解決、心に残る感動的な場面が描かれるのか。「このドラマが描きたいのか、最終週を前にさっぱり理解できない」という声に対する答えは、最終週の放送に委ねられています。

どんな結末を迎えるにせよ、「おむすび」が残した議論と反響は、次の朝ドラ「あんぱん」への期待と教訓として引き継がれていくことでしょう。半年間にわたって視聴者の朝に寄り添った「おむすび」の物語は、その評価はともかく、確かに多くの人の記憶に「結び」付けられたのです。

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