NHK朝ドラ『あんぱん』:高知までの長い道のりと嵩の揺れる心情

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「朝田パン」の開店と町の人々の反応

御免与町に「朝田パン」がついに開店しました。のぶと羽多子は元気いっぱいに店の前に立ち、道行く人々に声をかけて呼び込みに精を出しています。のぶの明るい声と羽多子の温かな笑顔は、初めてのお店の船出にぴったりでした。

二人の熱意は伝わるものの、町の人々の反応はというと、思ったよりも冷ややかなものでした。御免与町はパンを食べる習慣がなく、朝ごはんといえばお米とみそ汁、漬物という家庭がほとんど。「これは何じゃ?」「食べ方がわからん」と首をかしげる人も少なくありませんでした。

朝田パンのあんぱんは一個3銭という低価格で提供されています。庶民の手が届きやすい値段設定にしたのは、より多くの人にパンの美味しさを知ってもらいたいという朝田家の思いからでした。しかし、初日の売り上げは期待したほどではなく、店の奥では「このままでは難しいかもしれない」という声も漏れ聞こえてきます。

それでも諦めないのが朝田家の人々。特にのぶは「うちのパンはきっと喜んでもらえる」と信じて疑いません。彼女の純粋な思いは、ヤムおじさん(阿部サダヲ)の心も少しずつ動かしているようです。一度は「もういい」と言ったヤムおじさんですが、のぶの一生懸命な姿に何か心を動かされるものがあったのかもしれません。

そんな「朝田パン」の開店初日に、一つの出来事が起こります。登美子からの葉書が届いたのです。嵩は久しぶりに母からの便りに心を躍らせ、千尋も「母ちゃまに会いたい」と言い出します。のぶも嵩のうれしそうな表情を見て、自分のことのように喜びます。

パン屋の開店という新たな一歩と、登美子からの葉書という思いがけない出来事。この二つの出来事が、これから彼らの人生をどう変えていくのでしょうか。夢と希望を乗せた「朝田パン」の行方と、嵩と登美子の再会の行方が気になります。

パンは単なる食べ物ではなく、人と人をつなぐ架け橋となるかもしれません。嵩が弟のために、そして自分自身のために高知へと旅立つきっかけとなったのも、この「朝田パン」の開店がもたらした変化だったのかもしれません。

戦前の時代、新しいものを受け入れることに慎重だった人々に、パンという文化がどのように浸透していくのか。そして、その過程で嵩たち子どもたちの心はどう成長していくのか。朝田パンの今後の展開が楽しみでなりません。

小さなパン屋から始まる大きな物語。それはまさに、後の「アンパンマン」誕生へとつながる第一歩なのかもしれません。人を思いやる心、誰かのために何かをしたいという純粋な気持ち。それらが「朝田パン」に詰まっているようです。

この町に新しい風を吹き込んだ「朝田パン」。嵩の物語とともに、このパン屋の物語も見守っていきたいですね。

母・登美子を思う嵩の切ない心情

しばらく音沙汰のなかった母・登美子(松嶋菜々子)からついに葉書が届きました。嵩(木村優来)の小さな手が、その葉書をそっと開く瞬間、彼の目には期待と不安が交錯していました。

「嵩、元気ですか?よい子にしていますか?用事が長引いていて、母さんが迎えに行くのは、もう少しかかりそうですが、嵩は叔父さんと叔母さんの言うことをよく聞いて、いい子にして待っていてください 母」

短い文面に込められた母の言葉を読み、嵩の心は明るさを取り戻したように見えました。しかし、その奥底には言葉にできない寂しさも隠されていたのではないでしょうか。毎日、母の帰りを待ち続ける嵩。彼は白いパラソルを手に去る母の背中を絵に描くことで、その思いを表現していました。

登美子のオープニングクレジットには、他の登場人物と違って名字がありません。これは嵩にとって「母」という存在が特別であることを表しているようです。嵩の中で、登美子は「朝田」でも「柳井」でもなく、ただ「母」という存在なのです。

嵩の弟・千尋は高熱を出し、「母ちゃまに会いたい」と言います。実の母ではない千代子(戸田菜穂)を「母」と呼びながらも、千尋の心の中にも登美子への思いが残っているようです。嵩は千尋の願いを聞き、自分自身も会いたい気持ちを抑えきれず、葉書の住所を頼りに高知へと向かうことを決意します。

のぶ(永瀬ゆずな)の「会いに行って連れてくればいい。うちならそうする」という言葉が、嵩の背中を押しました。しかし、嵩はまだ知りません。登美子が再婚したという話を。その事実を知らないまま、嵩は希望に胸を膨らませて母に会いに行くのです。

嵩の部屋は弟と別々になっています。同じ兄弟でありながら、扱いが違うことに嵩は心の中で葛藤しているのかもしれません。それでも嵩は、弟のために、そして自分自身のために、勇気を出して一人で高知へと向かいます。

「母をたずねて三千里」とまではいきませんが、8歳の子どもにとって、高知までの10キロの道のりは決して短いものではありません。それでも、母に会いたいという一心で、嵩は線路沿いの道を一歩一歩進んでいきました。

嵩の憂いを帯びた表情には、多くの視聴者が心を打たれています。「嵩くん役の子役さん本当に上手いな。嬉しい時も寂しい時も内に秘めてる感じ、優しく控えめな嵩らしさがよく表れてる」というコメントが示すように、嵩の繊細な心の動きが見事に表現されています。

両親を亡くして親戚に引き取られたり養護施設に入所した子どもたちは皆、孤独に泣いています。しかし、嵩の場合は実の母が生きているだけに、伯父夫婦には甘えられない距離を感じ、また違う涙を流しているのかもしれません。

そして、ついに嵩は登美子の家にたどり着きます。「ごめんください!」と呼びかける嵩の声に、登美子は「嵩…」と答えます。しかし、彼女の表情には戸惑いが見えます。この再会が、嵩の期待通りのものになるのか、それとも新たな悲しみをもたらすのか…。

登美子を思う嵩の純粋な気持ちが、これからどのような形で実を結ぶのか。次回の展開が、今から胸を締め付けるようです。

高知までの10キロを歩いた少年の勇気

御免与町から高知までの道のり、それは約10キロという距離でした。現代の私たちからすれば、小学生の子どもが一人でそんな距離を歩くなんて信じられないことかもしれません。しかし、嵩(木村優来)にとって、その10キロは母・登美子(松嶋菜々子)に会うための、乗り越えなければならない壁だったのです。

嵩がどんな気持ちでこの長い道のりを歩いたのでしょうか。お母さんに会いたいという千尋(平山正剛)の思いを胸に、そして何より、自分自身がお母さんに会いたいという一心で懸命に歩いたため、距離の長さを感じなかったのかもしれません。母への思いが、彼の小さな足を前へ前へと進ませたのでしょう。

嵩は屋村草吉(阿部サダヲ)に「高知の町まで歩いて行けるか」と尋ねます。草吉は「歩きでも、線路沿いに行けば着くだろうよ」と答えました。この言葉を信じて、嵩は一人で高知への道を歩き始めたのです。

御免与町のモデルとみられる現在の高知県南国市後免町から高知駅までは、JR土讃線で5駅(10.4キロ)、乗車時間は17分前後とされています。電車なら20分弱の距離を、幼い嵩は歩いて向かったのです。一里は約4キロと言われますから、10キロはおよそ2.5里の道のり。当時としても決して短い距離ではありませんでした。

「線路沿いに行けば着く」という草吉の言葉を信じて歩き続けた嵩。SNSでは「子供の足でも何とか歩ける距離に設定してるのがちゃんとしてる」「10キロだと子供の歩きなら2時間くらいかな」「子供にとって、行きたい目的があれば距離を意識しないで淡々と歩いて行くと思います」といった意見が寄せられています。

当時の子どもたちは、今よりもずっと歩くことに慣れていたとも言われています。「うちの親は通学で6〜7キロの舗装されていない道を歩いて通学していた」という声もあります。当時はSLの時代で、現代よりも移動に時間がかかり、短い距離でも嵩には「三千里」のように感じられたかもしれません。

それでもなお、高知の町まで歩いていくという嵩の決断には、並々ならぬ勇気が必要だったはずです。彼は地図も持たず、ただ葉書に書かれた住所だけを頼りに、見知らぬ道を歩き続けました。

柳井千代子(戸田菜穂)たちは嵩を心配し、のぶ(永瀬ゆずな)は「うちのせいかも」と自責の念を抱きます。嵩の行動は、周囲の大人たちに心配をかけるものでした。しかし、それほどまでに嵩は母に会いたかったのです。

高知に着いた嵩は、疲れた様子も見せず、目的の家を探し当てます。「ごめんください!」と呼びかける嵩の声に、登美子は「嵩…」と答え、2人は久々の再会を果たしました。しかし、登美子が嵩を見たときの表情には、喜びだけでなく、戸惑いも見え隠れしていました。

嵩の行動は、母親を恋しく思う純粋な気持ちからでした。しかし、その先に待っているのは、嵩が想像していたような温かな再会なのでしょうか。それとも、新たな現実を知ることになるのでしょうか。

10キロの道のりを一人で歩ききった嵩の勇気が、彼にもたらすものは何なのか。母と子の再会の行方が気になります。そして、帰り道はどうなるのか…。嵩の帰り道が、どうか長い道のりにならないことを、願わずにはいられません。

再会した登美子と嵩の予想外の展開

長い道のりを歩いてきた嵩(木村優来)は、ついに高知の町で母・登美子(松嶋菜々子)と再会しました。「ごめんください!」と嵩が呼びかけると、登美子は「嵩…」と驚きの表情で応えます。しかし、その表情には嵩が期待していたような純粋な喜びだけではなく、複雑な感情が浮かんでいるようでした。

嵩が登美子と対面したときの表情は、期待と不安が入り混じったものでした。母に会えた喜びで目を輝かせながらも、どこか不安げな様子が見て取れます。一方、登美子の表情にも戸惑いの色が見えました。嵩の突然の訪問は、彼女にとって予想外の出来事だったのでしょう。

SNS上では「嵩くんを見たときの登美子さんの表情・態度だけで戸惑いしか感じませんでした」「崇が傷つく予感しかしない」という不安の声が多く上がっています。登美子が再婚したという話を聞いていた視聴者たちは、この再会が嵩にとって必ずしも幸せなものにはならないのではないかと心配しているのです。

「お母さんと会えた!けど、再婚のこと知ってしまうんかな」「立派なお屋敷…これは嵩を引き取ることは難しそう」といった声も。登美子が住んでいる家は立派な造りで、彼女が新しい生活を始めていることが窺えます。そんな環境に、嵩を引き取る余地はあるのでしょうか。

葉書の内容からも、登美子の現状が垣間見えます。「用事が長引いていて、母さんが迎えに行くのは、もう少しかかりそう」と書かれていました。この「用事」とは、再婚という新しい人生の始まりだったのでしょう。しかし、それを幼い嵩に直接伝えることはできず、「もう少し待っていて」という言葉で先延ばしにするしかなかったのかもしれません。

鈴木アナウンサーも朝の情報番組『あさイチ』で「崇が傷つく予感しかしない」と不安を口にしていました。多くの視聴者が、嵩と登美子の再会の行方を心配しているのです。

大人サイドからすれば、子どもを置いて再婚した母親とは距離を置くべきかもしれません。しかし、子どもサイドからすれば、やはり母親を求めているものです。この複雑な心情の交錯が、嵩と登美子の再会の場面に表れています。

嵩は千尋が「母ちゃまに会いたい」と言ったことをきっかけに、母に会いに行くことを決意しました。しかし、本当は自分自身が母に会いたかったのではないでしょうか。両親を亡くして親戚に引き取られた子どもたちは皆、孤独に泣いています。しかし、嵩の場合は実の母が生きているだけに、より複雑な感情を抱えているのかもしれません。

登美子としては、時機を見て嵩を引き取ろうとしていたのかもしれません。しかし、根回しがまだ未完了だった状態で、突然嵩が訪ねてきたことで、彼女は困惑してしまったのでしょう。嵩は母の再婚、そして再婚先に先妻の子どもがいることを知り、自分の居場所がないことを悟ることになるのかもしれません。

「待っていてねと言ったじゃないの、勝手に来たら駄目でしょ」と言われるのではないかという不安の声も上がっています。嵩が10キロの道のりを歩いて辿り着いた先で、こんな冷たい言葉を浴びせられるのだとしたら、あまりにも切なすぎます。

明日でお別れなのかな…というコメントもありました。子役からそれぞれ今田美桜、北村匠海へのバトンタッチが行われるのでしょうか。予告では、大きくなった嵩が線路に耳を当てているシーンが流れているそうです。回想なのか、大きくなるまで会えないのか…視聴者の関心は高まるばかりです。

登美子と嵩の再会が、どのような展開を見せるのか。嵩の帰り道が、どうか長い道のりにならないことを祈るばかりです。

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