NHK連続テレビ小説「らんまん」の第79回で、田邊教授が画工の野宮に無理難題を押しつけるシーンが登場した。万太郎の植物画が今後の水準になると野宮に告げる田邊に対し、野宮は学者の目で描かれたものだと反論するが、田邊は万太郎が描くような植物画を求め、野宮に帰れと言い放つ。
要教授(田邊教授)は、所謂「闇堕ち」と言われるキャラ感が際立ってきていますが、その孤立感を本当に上手く演じており、そんな夫を陰から支え続ける妻の聡子の存在がこれから光を放ってくるのではないかと勝手に思っています。
中田さんが演じる聡子は、万事控えめなキャラですが、そんな聡子に対する田邊教授の愛情は大学では決して見せない別のものです。この先、聡子が田邊教授を救うことを期待したいです。
田邊教授はパワハラを行っているようですが、「被害を受けた人たちには、新たな道が開けてきている」と皮肉を言っています。 万太郎さんは本の出版をし、大窪さんと共同研究を行い、藤丸さんは万太郎の手伝いをし、野宮さんは波多野さんとタッグを組んでいます。
田邊教授は、ある意味で他の人の人生の起爆剤になっている。内心では傷ついていることもわかっているが、彼が奥様を愛していることも理解している。だから、嫌味もそんなに腹が立たない。せめて奥様だけでも彼を救って欲しいと思う。
田邊教授は今の世の中ではパワハラやアカハラなどで最悪の教授とされてしまう可能性があるが、この植物学の教室では非常に重要な役割を果たしていると言える。万太郎を出入りさせたことや、助教授、講師、助手、学生の皆さんを立派な研究者に育て上げたこと、そして、今回は反面教師ではあったが先進的な作画の技巧者を育成するきっかけを作ったことなど、作品の中でも中心的な存在となっている。この作品は、植物学の成功事例はもちろんのこと、万太郎を取り巻く無名な方々にも焦点をあてて、人間関係を丁寧に描き切っているところに醍醐味を感じる。
ふと映画「アマデウス」のサリエリを思い出す。
この作品では、田辺教授を明らかに批判されるべき人物として描く高藤とは異なり、万太郎に対峙させた同時代人として描かれています。
一言で言えば、仲間を作れない人ですが、実は万太郎のような天才でコミュニケーション能力のある人よりも、必死で努力して無理をして生きている人の方が多いのです。
田辺教授を叩くよりも、彼の視点から見る余裕があると、この作品はより深く味わえるでしょう。
このドラマはテンポが良くて見やすいです。また、キャストと役者がぴったり合っています。特に、要潤の表情演技は特に素晴らしいです。前回の「舞い上がれ」も良かったです。ただ、朝ドラも当たり外れの差が大きく、今回は安心して楽しめます。
しかしながら、田邊教授の気持ちも分かります。途方もなく規格外の才能を持った無冠の人間がただ一心に自分の信じる道を歩いている姿を見せつけられたら、ひたすら無力感と脅威を感じると思います。大学の教授という肩書きだけが彼の唯一の拠り所であり、彼の人生において普通の存在であることを思うと切ない気持ちになります。万太郎さんのような人間はほんの一握りで、私こそが田邊教授サイドの人間なのだという思いで観ています。
いや、でも野宮さん、これから顕微鏡の使い方を覚えて、植物学界でも画期的な発見をするそうですよ。今回の出来事はその伏線だと考えています。何を発見するのか? それはこの後のお楽しみです。
今日の波多野さんと野宮さんのシーンに心から感動しました。短時間ながら、奥の深い会話とお互いを尊重し合う対等な雰囲気で、新たな人間関係が形成されたことに感動しました。明治中期頃の環境の中では、人間と人間が助け合うことがどれだけ重要かを感じました。しかし、現代のデジタル・ITの世界ではそのような部分が欠けているように感じます。田邊教授も今は荒れていますが、おそらくは人間関係・夫婦関係から本来の自分を見つめ直して行くと予測しています。
この脚本の素晴らしい点は、「嫌な人間像」をそのままで終わらせず必ず本来の良い人・優秀な人を引き出している点です。田邊教授が、「これからは万太郎の植物画の水準が当たり前」と言っていたけど、他に誰がそれを達成しているのか、例を示すこともなく野宮さんを追い込んでいます。本人も焦りと嫉妬で混乱しているようで、自力で何とかしようという気持ちは全く見せていません。
万太郎の深い植物愛に裏打ちされた画は、現代においても唯一無二ではないでしょうか。博物館のお二人の先生方は、図譜を我が事のように涙して喜び、称賛していました。私も感動しました。
田邊教授だけが良くない方向に、まさに落ちていっていて、心が痛いです。史実では大変な思いをされたと小耳に挟みましたが、辛くて詳細は調べていません。ドラマの中でも救われることになって欲しいです。妻の聡子さんとのやりとりを見ていて、そこには救いがありますが、仕事の場で田邊を救ってくれる誰かが現れて欲しいです。徳永助教授や大窪さんに、心を開けないだろうか。
たしかにパワハラ発言ではありますが、田邊教授の焦りや苦悶を想像できて、ただ責めることができません。脚本も要さんもとても上手だと思います。
らんまんは、ここ最近の朝ドラにあった変な盛り上がりやツッコミどころもなく、SNSで突発的に盛り上がることもなく、人物たちの人生を丁寧に描いた結果、良質なドラマに仕上がりました。安心して没入できます。
今日の回は主役ではなく、脇を固める俳優さんたちの神回でした。野宮の戸惑いや困惑の表情にすっかり呑まれ、見入ってしまいました。波多野との会話。こんなに素晴らしい俳優さんたちがいたなんて・・長屋のシーンで皆さんの演技もとてもよく、楽しみな朝ドラです。
研究者の世界って、純粋に楽しむ人だけでなく、出世の道を選んで後進を育成しようとしない人や、「あれは俺が発見したのに、横取りしやがって」と感情を持っている人など、今でも一握りいるんじゃないでしょうか。私の恩師は、教え子の才能を伸ばして尚かつ立て、立てまくって控え目な先生でした。
「野宮さんなら万太郎並みに描ける」と期待しての強い発言に、私は思いました。美術としての絵画と、学問研究としての植物画では、求めるものが違います。長年築いてきた画風を根本から変えさせられるのですから、並大抵な気持ちでは万太郎に追いつけない。田邊教授が求める手法を身につけられないと思います。それにしても、要さん、良い演技ですね。洋行帰りを鼻にかけた”Come in”な田邊教授は、思ったほどイヤな奴ではないのかな?万太郎との関係にまた一波乱あるかもしれませんが、実際の牧野富太郎先生はその時どうしたのか、敢えて知らないままにしておきます(今はネットで何でも簡単に知れちゃうので)。
画工の野宮は、田邊教授が福井の中学を視察したときにスカウトされ、田邊教授のための植物画を描かせるために東京に呼び寄せられ、東京大学植物学教室の出入りを許可されています。つまり、田邊教授が野宮を不要になった場合、東京大学への出入りもできなくなります。田邊教授が私物化しているのも同じです。
今日の「らんまん」では、失意の野宮と孤独な波多野が意気投合したのは幸いでした。しかし、今後、二人が交流していることを田邊教授が知った場合、嫉妬して意地悪な行動に出ることが心配です。
田邊教授は留学して米国の大学で学士を取得しているかもしれず、当時としてはかなり優秀な人物です。そこに対し、学歴も小学校も満足に出ていない万太郎とは真逆です。しかし、万太郎の植物愛は本物であり、新種発見のアプローチも正当派です。教授はplant-hunterを依頼したりと、これでは人が離れていく展開になってしまいます。邪な考えを持つトップがいると、組織は崩壊してしまいます。「らんまん」は植物もそうですが、人間模様の爛漫さが見えてきます。
田邊教授は、まるで「パワハラ」「アカハラ」の権化のようになってしまった人物です。彼は植物学会で超有名な学者でありながら、万太郎という人物への嫉妬心と、強い出世欲から来る焦燥感に苛まれています。しかしながら、彼は万太郎の大恩人であり、彼の類稀な才能と知識を最初に高く評価した人物でもあります。この点は決して忘れてはいけません。
この後、田邊教授は万太郎と決別し、一気に悲劇の主人公のような話になっていくと思います。その場面で、田邊教授夫人の存在が大きくなるのではないでしょうか。田邊教授の悲劇的最後も、田邉夫人との関わりで描かれ、感動的な話になることでしょう。
現在、その為の伏線が張られているように感じます。
野宮さんもフェードアウトするとか復讐するとかではなく、前向きな結論を出せてよかった。波多野くんと野宮さんの握手のシーンとか、本筋に関わる人ではないところも拾ってくれるのが「らんまん」の良いところかも。
言い方は高圧的だが、パワハラとは質が違います。教授は冷静に万太郎の手法が良いと認め、これが今後の主流になると見越して「アップデートしなきゃダメだ」と言っています。会社だって競合他社が良い新製品を出したからウチも頑張れと発破をかけるが、それに似ています。
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