昭和11年(1936年)に発生した「帝人事件」(ドラマでは「共亜事件」として描かれる)は、政財界の大物を含む16人が逮捕・起訴される事件で、政府への不信感が高まる中、斎藤実内閣が非難され総辞職に追い込まれた。斎藤実は五・一五事件後に首相となった海軍大将で、その後任として岡田啓介が着任するも、国家主義勢力の攻撃を受け二・二六事件後に辞任した。この二・二六事件では、陸軍青年将校が軍を率いて政府要人を襲撃し、天皇親政を目指す昭和維新を掲げたが、最終的に天皇の怒りを買い鎮圧された。これにより政治の実権は陸軍の統制派が握り、日本の国際関係は「日独防共協定」へと進展し、後に三国同盟へと発展する道を辿ることになる。この時代の日本は、国際的孤立を深めながらも、次第に太平洋戦争へと進んでいく。
ドラマでは触れられていませんでしたが、その時代の裁判官と検事は共に司法官であり、司法省と裁判所は別の組織とされていましたが、裁判官の人事には司法省、すなわち検事が関与していたのです。
この事実からも、「検察のドン」と称された「水沼」が、「桂場」と「日和田(検事)」の両者に対して「悪くはしない」と発言していたことが、当時の検察の強大な影響力を示しています。
さらに、二・二六事件などを考える際には、当時の職業軍人が選挙権を持っていなかったこと、軍人勅諭で政治介入が禁じられていたことも重要なポイントです。これにより、国民は政治家を「弱腰・腐敗・信頼できない」と見なし、一方で軍人を「頼もしい・清潔・純粋」と評価していました。また、軍のエリート層は特に優秀だとされていたのです。
これらの背景から、国民が軍に問題解決を期待し、軍もそれに応えようとしていたことが見受けられます。
朝ドラ『虎に翼』で描かれた事件は、昭和初期の日本における政治と経済の複雑な関係を象徴する出来事であり、国内の政治不信と経済的混乱が軍部の台頭を促し、最終的には日本の戦争への道を加速させたとされます。また、二・二六事件は軍内部の対立が顕在化し、政府の弱体化を露呈した事件であり、日独防共協定締結は国際的な共産主義の脅威に対抗するための策として、日本の対外的な姿勢を硬化させる一因となったのです。これらの事件は、国内外の危機感が相互に影響を及ぼし、日本の歴史の転換点となりました。
私は戦前の予審手続きについては知りませんでしたが、ドラマを通じて学ぶことができました。予審では、弁護士の弁護がない状態で証拠保全を目的とし、非公開で審理が進められ、公開裁判が開かれる頃にはほぼ裁判の流れが決定しているという、非常に厳しい制度であったことが分かります。帝人事件における大規模なでっち上げが長期にわたって審理されたことも、非常に驚くべきことでした。現在では、公平かつ公正な審理を受けることができるようになっており、その点での安心感や信頼感を新たに認識することができました。訴訟制度を整備した過去の人々や現在それを運営している関係者に、深く感
謝する気持ちを抱いています。
「帝人事件」は、起訴された人々が全員無罪となった冤罪事件であり、犯罪事実がない「空中楼閣」だったと言われています。事件の背後には、当時の斎藤内閣を倒し自らが総理になろうと企てていた検察界のドン、平沼騏一郎と「国本社」などの右翼団体が関与していたとされています。そして、検事による容疑者への厳しい取り調べが行われたことが、「検察ファッショ」という言葉の起源となっています。
本国のエリート層、特に当時の高級軍人や検察関係者が常に高潔で正しいとする幻想が、彼らの暴走を許す原因となりました。その結果、政治家や官僚、財閥への責任の押し付けや、マスコミによる国民の煽動が進み、民間の経済活動や民主政治が否定される方向へと進んでいきました。最終的には全ての責任を軍人に押し付け、軍国主義という言葉をもって、国民は自らの責任から逃れることができたとされます。この朝ドラは非常に深い内容を持っています。
このドラマで官邸の面会記録が取り上げられたことは、加計学園問題を想起させました。官邸の記録が存在しないとされたこと、桜を見る会の出席名簿が失われたこと、森友学園での公文書改竄など、安倍政権下での一連の問題が浮き彫りにされました。80年後もまだNHKが存在し、朝の連続テレビ小説があるとしたら、この時期の出来事がどのように描かれるのでしょうか。その時の主役には誰が適しているでしょうか。また、東京新聞の望月記者がどのように評価されているかも興味深い点です。
本件は、事件そのものが捏造であり、一部の政府関係者の内部抗争が一般市民を巻き込む形となりました。メディアによる政治不信の煽動が起こり、これが二・二六事件に発展しました。この事件は、太平洋戦争に繋がるとも言える大きな騒動となりました。事件の報道にはバランスが欠けており、これがメディアの姿勢を如実に示す例となっています。
英国が初めて結んだ同盟が日英同盟であった時期、日本は国際社会から信頼される国と見なされていました。しかし、次第に独裁国家ドイツに傾倒し、国際社会からの警戒を招くようになりました。その時点で「独裁国家」と組んだことが問題視されました。
これらの事例から、現代の政治資金問題と重ね合わせることもできます。現代も政治と金の問題で様々な場所が腐敗していると考えられます。
昭和初期の日本が太平洋戦争へと向かう過程を描いたこのドラマは、過去から現代に至るまでの問題を反映しており、視聴者に多くの思索を促しています。
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