新潟への異動を命じられた寅子(伊藤沙莉)。寅子は初めて家族との間に溝が出来ていることを自覚する。寅子は弟・直明(三山凌輝)から優未(竹澤咲子)がこれまで寅子に見せていた姿が本当の姿ではなかったことを知らされる。新潟には寅子だけが行くべきだという直明の言葉に、寅子は言い返すことができない。
このドラマ、本当に素晴らしいですね。
過去の女性たちが男たちに虐げられ蔑まれ、それを乗り越えるべく奮闘する女性主人公が描かれていると思いきや、同じ女性同士でも立場が違うと敵対することもあるという視点が新鮮です。
最近は寅子に少しイラっとしていましたが、脚本家さんの意図がわかったときには目から鱗が落ちました。非常に考え抜かれた脚本で、感心しきりです。
新しい道を切り開いた女性パイオニアを賞賛するだけでなく、花江さんのような立場の女性の思いを丁寧に描いている点が素晴らしいです。実際には家事だけでなく、地域のつきあい(昔の婦人会や子供会など)もあったでしょう。もっと評価されるべきです。相手の立場を思いやることが一番大事です。
寅子さん、花江さんに「言ったって仕方がないでしょう。そう思わせてきたのは寅ちゃんよ。この家の主は寅ちゃんなんだから」と言われてしまいました。戦前から寅子さんは、一家の主が重要事項を決める旧民法の考え方と戦い、女性が一個の人格者として認められない現実と向き合ってきました。しかし、気づけば自分が「家族のため」として家族の意向を聞かずに話を進める「主」になっていました。
頭では理解していても、行動は別物ですね。かつて穂高先生は、この父権主義を批判していましたが、寅子さんのためと称して彼女の意思に反して妊娠の事実を職場に広め、退職せざるを得ない状況にしてしまいました。寅子さんは、穂高先生が謝っても反省しても許せませんでした。
寅子さんの怒りは、花江さんが寅子さんに対して感じている怒りと同じかもしれません。寅子さんはそれに気づくことができるのでしょうか。これからの展開が楽しみです。
夫婦喧嘩のような状況でしたね。それにしても、花江さんの涙には心を動かされました。優未ちゃんへの大きな愛情と、寅ちゃんへの友情が感じられます。二人で新潟へ行くなんて心配すぎます。優未を今のままの寅ちゃんに任せるくらいなら私が育てたい、という花江さんの気持ちに共感します。直明も頑張ってほしいです。
脚本家の吉田恵里香氏、最初はどうかなと思っていましたが、最近のストーリー展開を見て「中々の実力派だな」と感じました。寅子は一言も二言も多いですが、必然的にこうなる予感がしていました。明日の展開がどうなるのか期待しています。
現代とは事情が違うかもしれませんが、家族の形としては花江さんが優未にとってのお母さんのようですね。寅子が仕事仕事で家にほとんどいない状況で、幼い優未を連れて知らない土地で暮らすのは娘にとって苦行です。寅子からしたら正論を言っているのになぜ?と理解しがたいかもしれませんが、子供の幸せを考えたら優しいお母さんの花江さんの元にいるのが正解です。
多岐川の熱い男ぶりと寅子への愛情は感じますが、裁判官に転勤はつきものですし、昇進もあるので仕方ない部分もあります。不貞行為を働いた女性役の美山加恋さん、かつて子役で可愛かった彼女が、という感慨深さがありましたが、彼女に寅子は持ち上げられたり毒づかれたりと、裁判官の苦労も忍ばれました。しかし、今日の寅子にとっては受難の序章に過ぎませんでした。
これまで優未を母である寅子より長く近くで育ててきた花江の苦労を全く理解せず、簡単に新潟へ二人で行くと言う寅子に花江がキレてしまったのも当然です。姉を尊敬している直明も、この件には黙っていられない様子でした。寅子の地方への転勤期間を朝ドラではどう描くのか興味深いです。
迫真の演技に圧倒されていましたが、ふと二人のやり取りを見ているうちに、我が家でも似たような諍いがあったことを思い出し、ノスタルジックな気分になりました。間に入って二人をなだめている直行の様子が可笑しくて、再び笑みがこぼれました。この続きが本当に待ち遠しいです。
寅ちゃんは、仕事に邁進しすぎて家族を顧みないまさに『昭和のお父さん』そのものです。調子に乗っている映像が見事に演出されていて、嫌な感じがよく伝わります。男の人と同様に、昇進する際には転勤も当然のこと。寅子自身も男女平等を望んでいるのですから、それは当然です。
しかし、寅子には子供がいます。優未のことを考えたら、自分が仕事に邁進できるのは周囲の助けがあってこそだと気づかないといけません。新潟に優未ちゃんを連れて行こうとするのは非現実的な考えですが、少なくとも「おいていく」とされるより私は嬉しかったです。寅子の図に乗る印象を視聴者に与えつつ、花江ちゃんが「お母さん」として不満を爆発させる展開は見事です。これからのストーリーも楽しみです。
寅子は、花江が何を言っているのか分からずただ困惑していました。先週の予告で、窓から家族を覗いて涙する寅子の姿がありましたが、その時には自分に見せたことのない無邪気に遊ぶ優未の姿があったのでしょう。優未の将来を考えると、一緒に新潟に行った方が良いと思うのですが、優未が「みんないるから寂しくないよ。いい子にしてお勉強も頑張る。だからお母さんお仕事頑張ってね」と言いそうで切ないです。
前作の大野さんのような人が来てくれれば万々歳なのですが、今回の朝ドラでは週最後の次週予告が本編で使用されないカットを使うことがあり、予告と本編の印象が違うこともあります。それでも、きめ細かく贅沢な作りだなと思います。
女性の社会進出や男女平等を目指している寅子ですが、時代に逆らってどんどん『昭和のお父さん』化しています。大嫌いなはずの『スン』を周りにさせてしまっている状況です。花江ちゃんが本音をぶつけてくれたので、優未たちが作り笑顔でなく心から笑える日が来て欲しいです。
多くの方が「花江ちゃんよく言った!」という派のようですが、私は少し違います。花江は寅子の親友ではありますが、家庭内の立場としては兄嫁で、戦死した兄の妻です。寅子も夫を亡くし、兄嫁一家全員と自分の弟と娘をたった一人で養っています。仕事が忙しくて家庭を顧みないのは仕方のないことだと思います。しかし、寅子が女性であり母親だからこそ、家庭のことや子育てを当然のように期待される風潮が問題だと思います。家事も楽ではありませんが、養ってもらっている義妹に対する花江の物言いには納得がいきません。
転勤に伴う子供の教育の問題は今も同じです。寅子が旧来的な男性のような言動をしてしまい、周囲の気持ちに無自覚であることが問題です。最後の二人のやり取りは夫婦喧嘩そのもので、転勤に家族はどうするのか気になります。
花江ちゃん、よく言った!でも、これがドラマだからではなく、花江ちゃんが兄嫁である前に寅子の親友だからこそキレて意見を言えたのだと思います。現実では多くの女性が家事や子育てを期待され、従わざるを得なかったのかもしれません。
寅子が長官に異議を唱える姿はカッコいい主人公ですが、花江にはそれが虚栄に聞こえたのでしょう。寅子と多岐川さんは、目標に向かって突き進むと周りが見えなくなるところが似ていますね。
寅子と花江さんの直接対決は見ものでした。直明ちゃんが花江寄りのレフリーという感じでしたね。寅子が家主の意識になってしまい、昔の男性のようになっていたことに対して、花江が怒りをぶつける脚本は本当に感心しました。ふだんは優しい花江の激しい言葉に涙腺が緩みました。
寅子の「家裁が女性裁判官向きの場所っていうのは違う」という発言は正解で、それを聞いて竹中記者やライアンがニンマリしていたのが良かったです。ふと、往年の名作漫画「家栽の人」を思い出しました。
花江ちゃんの怒りが爆発するのは少し早めのようですが、寅子の新潟転勤の話が出たタイミングでの展開は見事です。花江がラジオのボリュームを落としながら漬物を食べる姿を見て、もっと怒っても良いと思いました。花江や子供たちの気持ちを考えたらまだまだ怒り足りないでしょう。寅子にイライラしつつも、脚本家の手中に嵌まっている自分に気づきます。
花江ちゃん、頑張ってください!
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