朝ドラ「おむすび」から見る家族の絆 ~永吉じいちゃんの不器用な愛~

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早すぎる時間の流れに戸惑う視聴者たち

朝ドラ「おむすび」の時間の流れの速さに、私たち視聴者は戸惑いを感じているのかもしれません。特に最近の第6週、第7週では、まるで光のように時が進んでいきましたわ。一瞬のシーンの切り替わりで半年が経過したかと思えば、あっという間に2年の月日が流れ、高校1年生だった結が3年生になっているのです。

「油断すると時が流れまくる」「斬新な時間の進め方」「一瞬で半年」といった声が視聴者から寄せられているように、この大胆な時間の使い方は、私たちの予想をはるかに超えるものでしたわね。特に神戸への移住を決めてからの展開の速さには目を見張るものがありました。空き物件の電話がかかってきてから引っ越しの直前までがたった1話ちょっとという驚きの展開。

でも、少し立ち止まって考えてみますと、この時間の流れ方は、実は「おむすび」らしさの表れなのかもしれません。脚本家の根本ノンジさんは、インタビューで15分という限られた時間の中でのペース配分の難しさについて語っていらっしゃいました。「ちょっと台詞の長いシーンを書いたらすぐページ数がかさんでしまう」という言葉からも、その苦心が伝わってきますわ。

確かに、現代を舞台にした朝ドラならではの課題もあるのでしょうね。歴史ドラマのように大きな時代の流れに沿って物語を展開できるわけではありません。結は1990年生まれという設定で、現代でもまだ30代。この短いスパンの中で、彼女の成長と人生の転機を描いていくためには、時にはこのような大胆な時間の跳躍も必要なのかもしれません。

ただ、視聴者の中には「もう少しゆっくりと描いてほしかった」という声も少なくありませんわ。特に神戸移住については、家族それぞれの心情の変化や決意のプロセスを、もう1週間くらいかけて丁寧に描いてほしかったという意見も多く見られます。結自身も以前は「生涯糸島宣言」をしていたはずなのに、いつの間にか神戸行きが決まっていたという展開の唐突さに違和感を覚えた方も多かったようです。

でも、これも「おむすび」という作品の個性かもしれません。「ドラマに説明を求めすぎ」という指摘もあるように、すべてを丁寧に説明するのではなく、時には観る人の想像力に委ねる部分があってもいいのかもしれませんわ。例えば、震災に遭って9年前から糸島に移り住んだという設定も、わざわざ説明的な台詞は使わずに、自然な会話や情景の中で伝えていく手法を選んでいます。

これからの展開では、神戸での専門学校生活や栄養士としての成長が描かれていくことでしょう。この先も予想外の時間の流れ方があるかもしれませんが、それも含めて「おむすび」らしさとして、私たちは温かく見守っていけたらいいなと思います。結局のところ、大切なのは時間の進み方ではなく、その中で描かれる人々の心の機微なのかもしれませんわね。

夢への第一歩、栄養士を目指す結の決意

高校生活の最後の年に、結はようやく自分の進みたい道を見つけました。それは栄養士という、人々の健康と幸せを支える大切な仕事。この決意に至るまでの道のりは、決して直線的なものではありませんでしたわ。

体育会系の彼氏、翔也のためにお弁当を作ることになったことが、結が栄養士を目指すきっかけとなりました。でも、これはただの「彼氏のため」という単純な動機ではなかったのです。スタミナ不足に悩む翔也のために、栄養価の高い食材を研究し、バランスの取れたお弁当作りに励む中で、結は食事の持つ力に気づいていったのですわ。

視聴者の中には「ギャル活動と栄養士の夢が結びつかない」という声もありましたけれど、私はそこにこそ結らしさが表れていると感じています。ギャルスタイルを貫きながら栄養士を目指すという選択は、型にはまらない結の個性そのものなのです。実際、専門学校に入学した結は、ネイルやメイクで先生に注意されながらも、自分らしさを失わず前に進もうとしています。

結の決意には、糸島での暮らしも大きく影響していたはずです。新鮮な野菜や魚介類など、豊かな食材に恵まれた土地で過ごした日々。農作業を手伝い、自分たちで育てた作物を食べる喜びを知った経験。これらすべてが、食を通じて人々の健康を支えたいという思いにつながっていったのでしょう。

また、監督の妻が栄養士として選手たちの食事管理を担当していたという設定も、結に大きな影響を与えました。プロの目線で食事を管理することで、選手のパフォーマンスが向上する。そんな栄養士の仕事の重要性を、結は間近で見て学んだのです。

しかし、栄養士への道は決して平坦ではありませんわ。専門学校での勉強は想像以上に厳しく、ギャルとしての自己表現も制限されがち。でも、そんな中でも結は自分らしさを失わず、むしろその個性を活かして新しい栄養士像を作り出そうとしているように見えます。

お弁当作りを通じて他者を支える喜びを知った結。その経験が、栄養士という夢につながっていったのです。これは単なる偶然ではなく、結が高校生活で得た大切な気づきだったのでしょう。人を想い、その人のために一生懸命考えて作ったお弁当。その延長線上に、栄養士という夢が芽生えたことは、とても自然な流れに感じられます。

神戸での専門学校生活では、きっと新たな課題や試練が待ち受けているはずです。でも、糸島で培った経験と、結らしい前向きな姿勢があれば、どんな困難も乗り越えていけるはず。これからの結の成長と、栄養士としての道のりが、とても楽しみですわ。

愛すべき頑固親父、永吉の本音と建前

松平健さん演じる永吉は、一見すると頑固で素直になれない父親ですが、その不器用な愛情表現の裏には、深い家族愛が隠されていたのですわ。特に息子の聖人が神戸に戻ると決めた時の永吉の反応は、私たちの心を強く揺さぶりました。

「イカン!絶対に許さん!」と声を張り上げる永吉。でも、その怒号の裏には「行ってほしゅうなか!オマエらがおらんようなると、つまらん!」という切実な想いが隠されていたのです。イスに座ってから突然始まるこの親子喧嘩は、コミカルでありながら、どこか切ない場面でしたわ。

永吉にとって、聖人との日々は何物にも代えがたい幸せだったのです。ケンカをしたり、みんなで笑い合ったり、食卓を囲んで酒を飲んだり、ナイターを観たり。そんなさりげない日常が、永吉にとっては最高の幸せだったということを、結の説得によって私たちは知ることになります。

実は永吉は、とても強い父親でもあったのです。阪神・淡路大震災の三日後、真っ先に神戸の避難所に駆けつけ、聖人の家族を糸島に連れ帰った時の姿は、まさに頼もしい父親そのものでした。しかし、その強さとは裏腹に、息子家族との別れを前にすると、ただの寂しがり屋のおじいちゃんになってしまうのです。

家族を想う気持ちが強すぎるからこそ、逆にその気持ちを素直に表現できない。「カッコいい人がいない」と評されるこのドラマの中で、永吉はある意味で最もカッコいい存在かもしれません。なぜなら、彼の不器用さこそが、最も人間らしい愛情表現だからです。

「暴れん坊じいさん」と呼ばれながらも、孫の手を離さず、鯛に向かって拍手をする姿など、永吉の愛すべきキャラクターは視聴者の心を掴んで離しません。半年経っても神戸行きの話を切り出せない聖人に対して、あえて反対することで背中を押す。そんな永吉なりの愛情表現が、このドラマの味わい深さを作り出しているのですわ。

永吉は「よう言うた」と言いながら、最後まで素直になれない。でも、それが永吉らしさなのです。説明的な台詞を使わず、そのままの姿を描くという「おむすび」の作風は、永吉というキャラクターを通して最も効果的に表現されているように思います。

いつも魚の話をし、酒を飲み、時には大声で怒鳴る。でも、その全ての行動の根底には家族への深い愛情がある。永吉は、現代のドラマではなかなか描かれない、昔ながらの日本の父親像を体現していると言えるかもしれません。

「つまらん」という一言に込められた寂しさと愛情。それを受け止めた家族との絆。永吉の存在は、現代社会で失われつつある家族の在り方について、私たちに静かな問いかけを投げかけているようにも感じられるのです。

懐かしい街並み、神戸での新たな生活

阪神・淡路大震災で被災し、糸島に移り住んでいた結の家族が、再び神戸の地を踏むことになりました。結にとって神戸は幼い頃の記憶が残る街。その街並みは大きく変わり、かつての家があった場所にはマンションが建っているという現実に、複雑な思いを抱えながらの帰還となりましたわ。

視聴者からは「震災でトラウマになっていたと思うのですが、すぐ神戸戻っちゃいましたね!亡くした友達のことも考えると…おむすびの心の揺れ、葛藤を表現して欲しかった」という声も上がっています。確かに、もう少し丁寧に結の心情を描いてほしかったという思いはありますわ。

しかし、商店街の人々の温かな歓迎が、結の不安を少しずつ和らげていきます。懐かしい顔ぶれに囲まれ、新しい生活への期待も芽生えていく様子は、とても印象的でしたわ。特に、昔からの近所の方々が、まるで時が止まっていたかのように迎えてくれる場面には、神戸の人々の温かさが表れていました。

ただ、新しい環境には新しい課題も待ち受けています。結は意気揚々とギャルスタイルで専門学校に入学しますが、周囲の反応は必ずしも好意的ではありません。「地元民としてとりあえず言わせてもらうと神戸は『ギャル文化不毛の地』」という指摘もあるように、神戸という土地柄とギャルファッションの組み合わせには、ある種のミスマッチが存在するのかもしれませんわ。

実際、水道筋のある灘区は、松蔭女子高をはじめとするお嬢様学校が多い地域。「一番ギャルからかけ離れた地」という声もあります。そんな環境の中で、結はネイルを注意されたり、奇異な目で見られたりと、早くも文化の違いに直面することになるのです。

しかし、これも結の成長にとって必要な試練なのかもしれません。糸島という温かな土地で培った自分らしさを、どのように神戸という新しい環境で開花させていくのか。その過程こそが、これからの「おむすび」の大きな見どころになりそうです。

気になるのは、栄養士としての道のりですわ。専門学校での学びを通じて、結はどのように成長していくのでしょうか。「やっと通常運転…?」という声もあるように、ようやく物語の本筋である栄養士への道が始まろうとしています。「舞い上がれ!」のような展開にならないことを願いつつ、結の夢の実現を見守っていきたいと思います。

神戸での新生活は、結だけでなく家族全員にとっての再スタートとなります。聖人も理容師として再び神戸で挑戦することを決意し、新たな一歩を踏み出そうとしています。糸島で過ごした日々を大切な思い出として胸に刻みながら、これからどのような物語が紡がれていくのか。神戸の街並みと共に、結たち家族の新しい章が始まろうとしているのです。

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