医療ドラマとしての新たな挑戦 ~NSTチームの活躍~
連続テレビ小説『おむすび』は、第18週に入り、ついに主人公・結が管理栄養士として大病院での活躍を見せ始めました。物語は結が管理栄養士になって4年が経過したところから再開され、まさに医療ドラマとしての新たな展開を迎えることとなりました。
大きな特徴として挙げられるのが、NST(Nutrition Support Team)という、科の垣根を超えて栄養管理に特化したチームの存在です。この設定により、結は小児科から消化器科まで、幅広い診療科の患者さんと関わることが可能となり、多様なエピソードを展開できる基盤が整えられました。
しかし、朝ドラならではの15分という時間的制約は、医療ドラマとしての深みある展開を難しくしている側面もあります。1時間ドラマであれば1人の患者の物語をじっくりと描くことができますが、朝ドラでは2話分使っても30分。その中で次々とエピソードを描かなければならず、脚本家にとっては大きな挑戦となっています。
具体的には、ネフローゼ症候群の少年や、潰瘍性大腸炎の中年男性など、様々な症例が登場します。彼らは病院食を受け入れず、医師を困らせるものの、結が管理栄養士としての専門知識を活かしながら、食を通して患者の心をほぐしていく展開が描かれています。
ただし、このアプローチには賛否両論があります。病気や栄養に関する専門知識、病院の仕組みなど、多くの要素を15分という限られた時間で描写するため、どうしても表面的な描写に留まってしまう傾向があります。視聴者からは「深掘りが控えめで、誰もがわかりやすいようなさわりの部分のみを描いている」という指摘も上がっています。
一方で、これは朝ドラの新しい挑戦とも言えます。従来の朝ドラは、一人の人間の人生を丁寧に描く物語が主流でした。誕生から成長、就職、結婚、出産と、様々な人生イベントを愛おしく見つめる作風が特徴でした。しかし『おむすび』は、医療ドラマという新しい切り口を取り入れることで、朝ドラの新たな可能性を模索しているとも考えられます。
ただし、管理栄養士になるまでの過程や、なったばかりの新人時代の苦労を描かずに、いきなり4年後から物語を展開するという構成には疑問の声も上がっています。医療の専門職として成長していく過程を丁寧に描くことで、より深みのある医療ドラマとしての展開が期待できたのではないかという指摘もあります。
それでも、NSTという専門チームを通じて、様々な診療科の患者と関わることができる設定は、医療ドラマとしての可能性を広げる効果的な仕掛けと言えるでしょう。管理栄養士という専門職の目線から、患者の心と体の健康を見つめる新しい医療ドラマの形が、ここから展開されていくことが期待されます。
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演技力不足が露呈する中で見えてきた課題
連続テレビ小説『おむすび』において、主演を務める橋本環奈の演技力をめぐる議論が、作品の重要な論点となっています。現在30代の役を演じる橋本環奈ですが、ドラマが始まった当初からの立ち居振る舞いや話し方に大きな変化が見られないという指摘が相次いでいます。
特に顕著なのが、感情表現の単調さです。結のセリフを聞いていても表情がいつも同じで、分かり切ったド正論をひとりでしゃべっているような印象を与えています。各エピソードの締めくくりは、まるで説教をされているかのような展開となり、相手は黙るかうなづくかのリアクションしか取れない状況が続いています。
演技の技術的な面では、声の強弱、目の動き、アップになっていない場面での表情作り、動作や仕草による感情表現など、多くの課題が見られます。例えば、濵田科長のような脇を固める役者たちと比較すると、その差は歴然としています。先日のシリアスなシーンでも、涙がこぼれ落ちそうにない泣く演技に、視聴者からは驚きの声が上がりました。
コミュニケーションの描写においても課題が見られます。「話し上手は聞き上手」と言われますが、結は問いかけてはいるものの、相手の話を真に汲み上げているとは言えず、自論を展開しているだけに見えます。そのため、視聴者からの共感や同調を得ることが難しい状況となっています。
さらに、年齢による演技の変化という点でも課題が浮き彫りになっています。ドラマ開始時から立ち居振る舞いや話し方に変化が見られないため、まだ専門学校を出たばかりの年代を演じているような印象を与えています。30代の役柄を演じる現在も、その年齢に見合った深みや説得力のある演技には至っていないという指摘も少なくありません。
この問題は、作品全体の説得力にも影響を及ぼしています。例えば、上白石萌音とダブルキャストで演じた「千と千尋の神隠し」との比較において、そのクオリティの差は歴然としていたと指摘する声もあります。
病院での場面においても、管理栄養士としての専門性や説得力のある演技が求められる中、その期待に十分に応えられていないという評価が目立ちます。患者との対話シーンでは、セリフを言っているだけで、本当の意味での対話が成立していないように見えるという指摘もあります。
ただし、これらの課題は橋本環奈個人の問題というよりも、キャスティングの段階での判断や、演出面での工夫の余地があったのではないかという指摘も見られます。「コメディ要素を評価してのことであれば、この方はお得意の映画でなければ無理なお話」という意見や、「真面目なストーリーにスパイス的に盛り込みたかったのであれば、コメディ要素しかない方よりは無傷の新人さんの方が新鮮だった」という指摘もあります。
結果として、演技力の問題は作品の視聴率低迷の一因となっている可能性も指摘されています。朝ドラという重要な枠での主演を務めるにあたり、より綿密な準備や演技指導、あるいはキャスティングの段階での慎重な判断が必要だったのではないかという教訓を残すこととなりました。
管理栄養士という専門職の描き方に物足りなさ
連続テレビ小説『おむすび』における管理栄養士という専門職の描写には、多くの課題が指摘されています。特に顕著なのは、主人公・結が管理栄養士になるまでの過程や、新人時代の苦労を描かずに、いきなり4年後からストーリーが展開される点です。
管理栄養士という資格は、高度な専門知識と技術が要求される職業です。しかし、ドラマでは資格取得までの過程があまりにも簡略化されており、「管理栄養士ってこんな簡単になれるものなの?」という疑問の声が多く上がっています。勉強の過程や試験対策、実習での経験など、専門職としての基礎を築く重要な期間がすっぽりと抜け落ちているのです。
また、病院での業務描写においても物足りなさが目立ちます。大病院にはNSTという、科を超えて栄養管理に特化したチームが設置されており、結もそのメンバーとして活動しています。この設定により、小児科から消化器科まで、様々な患者との関わりを描くことが可能になりましたが、その描写は表面的なものに留まっています。
例えば、ネフローゼ症候群の少年や、潰瘍性大腸炎の中年男性など、様々な症例が登場しますが、それぞれの疾患に対する栄養管理の専門的なアプローチや、患者との信頼関係の構築過程が十分に描かれているとは言えません。病院食を食べない患者の心をほぐすという展開も、管理栄養士としての専門性よりも、「ギャル魂」による解決が強調される傾向にあります。
さらに、病院内での他職種との連携についても、より深い描写が望まれます。医師、看護師、他の医療スタッフとの協働は、現代の医療において不可欠な要素です。しかし、ドラマでは「メシ食わしとけ」という非常識な発言をする女性医師や、パワハラ医師など、現実離れした描写が目立ち、真摯な医療従事者間の連携が十分に描かれていません。
就職の過程についても疑問が残ります。結は就活でパラパラを踊り、最終的にはツテとコネで就職を決めています。これは視聴者の反感を買う要素となっており、専門職としての就職活動の現実とかけ離れた描写となっています。
管理栄養士の日常業務についても、より詳細な描写が望まれます。栄養指導の準備、カルテの確認、栄養計画の立案、他職種とのカンファレンス、給食管理など、多岐にわたる業務内容が存在するはずですが、そうした実務的な側面はほとんど描かれていません。
一方で、朝ドラという15分という時間的制約の中で、どこまで専門的な内容を描くことができるのかという課題もあります。しかし、それでもなお、専門職を主人公とする作品として、より丁寧な描写や現実に即した展開が求められていたのではないでしょうか。
結果として、管理栄養士という専門職の魅力や、その仕事の重要性が十分に伝わっていないという印象は否めません。視聴者に対して、この職業の本質的な価値や、やりがい、そして直面する課題をより深く伝えることができれば、作品としての説得力も増したのではないかと考えられます。
宮崎莉里沙演じる花の成長に見る親子の絆
『おむすび』の物語は、第18週に入り、時間が大きく経過して、結の娘・花(宮崎莉里沙)が8歳に成長した姿を描いています。サッカー好きの活発な子どもに育った花の存在は、この物語における親子関係の新たな展開を示唆しています。
特筆すべきは、物語における時間の流れ方です。結が管理栄養士になって4年が経過したところから物語が再開されるという大胆な展開により、母と娘の関係性も大きく変化しています。花の成長は、結の人生における重要な転換点として位置づけられています。
しかし、この時間の経過の描き方には賛否両論があります。4年という時間の飛躍は、結の管理栄養士としての成長過程だけでなく、母として成長していく過程も省略してしまっているのです。視聴者からは、「主人公の心の動きがまったく伝わってこない」という声も上がっています。
親子の経済的な側面も重要なテーマとなっています。夫の翔也が理容師に転職を決意する場面では、花の教育費やサッカーなどの習い事にかかる費用が話題に上がります。しかし、こうした現実的な問題も、深く掘り下げられることなく、「カッコいい」という理由だけで簡単に片付けられてしまう傾向にあります。
花の将来については、サッカーを通じた成長が示唆されています。活発な性格の描写や、サッカーへの熱中ぶりは、今後の展開における重要な伏線となる可能性があります。視聴者の中には、「この先、オリンピック出場レベルまで成長するのでは」という予測をする声もあります。
母娘の関係性については、結のギャル文化への理解や、自身の経験を活かした子育ての姿勢が垣間見えます。かつてギャルとして自分らしさを追求した結が、今度は娘の個性をどのように受け止め、支援していくのか。その過程は、現代の親子関係を考える上で興味深いテーマとなり得ます。
しかし、現状の描写では、親子の深い感情の機微や、成長に伴う葛藤などが十分に描かれているとは言えません。例えば、結の演技の単調さは、母親としての成長や悩みを表現する上での障壁となっています。また、物語の展開が次々と変化していく中で、親子の絆を丁寧に描く時間が十分に確保されていないという指摘もあります。
それでも、花の存在は物語に新たな可能性をもたらしています。母である結の管理栄養士としての仕事と、娘の成長を支える母親としての役割。この二つの側面をどのように両立させていくのか、今後の展開が注目されます。また、父親である翔也の理容師への転身も、家族の在り方や子育ての本質を考えさせる要素となっています。
今後、花の成長とともに、より深い親子の絆や家族の物語が展開されることが期待されます。しかし、それには今までの表面的な描写を超えて、より丁寧で心に響く展開が必要とされているのかもしれません。
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