朝ドラ最低視聴率を記録する「おむすび」の課題とは
NHK連続テレビ小説「おむすび」は、3月末の最終回に向けて物語が最終章「病院・管理栄養士編」に突入しましたが、視聴率の面で厳しい状況に直面しています。この状況には、いくつかの重要な課題が浮き彫りとなっています。
まず第一に、ストーリー展開の問題が指摘されています。「起承転結」の基本的な物語構造が崩れており、ヒロインの結自身のエピソードでは「起」が描かれると「結」に飛んでしまい、結がすでに結果を出した後の場面になる展開が目立ちます。また、脇役との関わりのストーリーでも、発端となる「起」のエピソードを描かずに、いきなりその脇役の人物が激高したりするなどの「承」から始まり、問題解決の過程である「転」が描かれないまま、解決後の「結」の場面が描かれるという特徴が見られます。
第二に、テーマの散漫さが挙げられます。「ギャル文化」「震災」「栄養士」「平成という時代」といった複数のテーマが掲げられていますが、それぞれが十分に掘り下げられないまま進行しています。特に、管理栄養士の資格取得過程や就職後の成長過程が十分に描かれていないことは、視聴者の共感を得られない一因となっています。
さらに、視聴者層とのミスマッチも大きな課題です。朝ドラの主な視聴者層は65歳以上が大部分を占めていますが、「ギャル文化」はその世代には馴染みが薄く、共感を得ることが難しい設定となっています。高視聴率を記録する朝ドラの多くは昭和中期の話が中心で、視聴者が若かった頃を懐かしむことができる要素が含まれています。
また、阪神淡路大震災や東日本大震災という重要な出来事の描写についても課題が残ります。これらの大きな災害は、単にドラマの中の話題として取り上げられただけで、深い描写や意味付けがなされていないという指摘があります。特に、2018年6月の大阪北部地震については、ヒロインの住む地域で起きた出来事にもかかわらず、その描写が省略されている点も違和感を持たれています。
制作面での課題も見過ごせません。主演の橋本環奈のスケジュールの都合により、撮影に不在期間が生じたことも、ストーリーの一貫性や深みを損なう要因となっています。視聴者からは、朝ドラ撮影期間はしっかりとスケジュールを空けて、集中して取り組むべきだという声も上がっています。
こうした複数の課題が重なり合い、結果として視聴者の期待に応えきれていない状況となっています。朝ドラは半年という長丁場で、主人公のみならず脇役までもが視聴者の感情移入を引き出せるような脚本が求められています。しかし「おむすび」では、主人公すら十分な感情移入ができない展開となっており、それが低視聴率という結果に表れているのです。
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橋本環奈の朝ドラヒロイン起用に隠された制作側の思惑
NHK連続テレビ小説「おむすび」の制作陣が橋本環奈をヒロインに起用した背景には、複雑な思惑が存在していたことが、視聴者の反応から浮かび上がってきています。
制作側は、人気者である橋本環奈を主役に据えることで視聴率を確保できるという安易な考えを持っていたとされています。しかし、この判断には重要な見落としがありました。人気があるというだけで、朝ドラの視聴者層からの共感を得られるとは限らないという事実です。特に、どの世代に人気があるのかという点での精査が不十分だったことが、現在の状況を招いた一因となっています。
また、橋本環奈の多忙なスケジュールも、ドラマの質に影響を及ぼす結果となりました。朝ドラの撮影期間中にもかかわらず、不在期間が生じるなど、主演女優としての集中度に疑問符が投げかけられる事態となっています。視聴者からは、朝ドラの撮影期間は他の仕事を入れずに、しっかりとスケジュールを確保すべきだという指摘が相次いでいます。
さらに、演技面での課題も浮き彫りとなっています。高校生時代のギャル演技と、現在の病院勤務の管理栄養士としての演技に変化が見られないという指摘があります。これは、「カムカム」で活躍した川栄李奈のように、物語の進行とともに表情や話し方、声のトーンまでもが成長していく演技と比較されることで、より際立つ結果となっています。
制作側の意図としては、紅白歌合戦の司会起用を見据えた布石という見方もあります。そのため、ナレーターによるダイジェストや、仲里依紗演じる歩を中心とした描写が多くなっているという分析もなされています。しかし、これまでの朝ドラでは主人公が何らかの形で物語に深く関わり、視聴者との感情的な結びつきを作り出していたのに対し、「おむすび」ではその要素が希薄になってしまっています。
橋本環奈自身の朝ドラに対する姿勢も、視聴者の目には映っています。朝ドラに出演することが夢だったという熱意が感じられないという声も上がっています。特に、ギャル時代の金髪表現においてかつらが使用されていた点なども、視聴者の没入感を損なう要因となりました。
このように、制作側の思惑は必ずしも成功には結びつかず、むしろ逆効果となる面も見られました。朝ドラという特別な枠組みにおいて、主演女優の起用は単なる知名度や人気度だけでなく、より多角的な視点からの検討が必要だったことが、この状況から浮き彫りとなっています。
結果として、売れっ子タレントを起用するという戦略は、朝ドラという作品の本質的な魅力を引き出すことには必ずしもつながらなかったと言えるでしょう。今後の朝ドラ制作においては、この経験を教訓として、主演女優の選定により慎重な判断が求められることになりそうです。
演技力不足への指摘と視聴者の厳しい評価
NHK連続テレビ小説「おむすび」の放送が進むにつれ、主演の橋本環奈の演技に対する視聴者からの評価は、次第に厳しさを増していきました。特に、物語の展開に伴う演技の変化の乏しさが、大きな課題として指摘されています。
最も顕著な問題として挙げられているのが、高校生時代のギャル演技と、現在の病院勤務の管理栄養士としての演技に変化が見られないという点です。視聴者からは、しばらく見ていなかった後に久しぶりに視聴したものの、高校生の時のギャル演技と全く変わっていないことに違和感を覚えるという声が多く上がっています。
この課題は、過去の朝ドラヒロインとの比較によってより鮮明になっています。特に「カムカム」で活躍した川栄李奈の演技が引き合いに出されることが多く、川栄は物語の終盤で社会人としての場面では、表情も話し方も落ち着きを見せ、声のトーンも低くなるなど、キャラクターの成長を演技で表現していたことが高く評価されています。
また、病院での管理栄養士としての演技にも課題が指摘されています。初対面の患者に対して「チョー」を連発するなど、過度に馴れ馴れしい態度が違和感を招いています。特に、摂食障害の患者への対応など、繊細さが求められる場面でも、ギャル口調でのコミュニケーションが続く点に、医療現場の実態との乖離を感じる視聴者も少なくありません。
演技の表層的な部分だけでなく、キャラクターの内面的な成長を表現することにも課題が見られます。例えば、「うちも長いことギャルやってきて可愛いことに命かけてきた」というセリフに対して、視聴者からは違和感が示されています。これまでの物語展開において、そこまでギャルファッションやギャルメイクにこだわっていた描写が乏しく、セリフと実際の演技や物語との間にズレが生じているという指摘です。
さらに、演技力の問題は物語全体の説得力にも影響を及ぼしています。管理栄養士としての成長過程や、資格取得までの苦労、現場での試行錯誤といった重要な要素が、演技を通じて十分に表現されていないことで、視聴者の共感を得ることが難しくなっています。
このような状況に対して、視聴者からは「車のCMは素敵なのに、ドラマや映画は向いていない」という評価や、「紅白の司会の方が向いている」といった指摘もなされています。また、朝ドラという重要な作品における主演を務めるにあたって、演技の研鑽や役作りへの取り組みが十分だったのかという疑問の声も上がっています。
結果として、演技力の課題は単なる技術的な問題を超えて、朝ドラという作品全体の魅力や説得力を損なう要因となっています。視聴者の厳しい評価は、朝の連続テレビ小説という特別な枠組みにおいて、主演女優に求められる演技力の水準の高さを改めて浮き彫りにする結果となりました。
病院食を通して描かれる管理栄養士の現場の実態
病院における管理栄養士の実態は、ドラマ「おむすび」の描写と現実との間に大きな乖離があることが、現場経験者たちの声から明らかになっています。
病院の栄養管理の現場では、病院所属の管理栄養士と委託会社の管理栄養士との間に明確な役割の違いが存在します。ドラマでは、病院所属の管理栄養士は患者の食事に関する管理部門を、委託会社の管理栄養士は調理部門を担当するという区分けがなされています。しかし、現実の病院では、コスト管理や現場のマネジメントなど、より複雑な業務分担が行われています。
特に病院食の調理現場では、患者の状態に応じて調理方法や味付けを変える必要があり、命に関わる重要な業務であるため、間違いは許されません。実習経験者の証言によると、総合病院の現場では緊張感が高く、時には怒号が飛び交うほどの厳しい環境だったとのことです。
例えば、カレー一つを作るにしても、普通のカレー、一口大、刻み、ペーストと4種類の形態に加え、病状に応じて使用できない食材や調味料がある患者のために別途数種類を作成する必要があります。結果として、カレーだけでも8種類の鍋が必要になることもあり、これが主菜、副菜、汁物すべてに及ぶため、仕込みの段階から非常に複雑な作業が要求されます。
また、ドラマで描かれているような突発的な要望、例えば夕方4時の時点で一人分だけ特別レシピのカレーを作るといった対応は、現実の病院では極めて困難です。委託給食会社は予定にない食材の在庫を持っておらず、追加の調理には人件費という経費もかかります。現役の管理栄養士からは、バイキング形式の栄養指導を実施する場合でも、実際には委託会社との費用交渉など、様々な準備段階があることが指摘されています。
さらに、管理栄養士という職業には、ドラマでは描ききれていない多くの課題があります。国家試験取得や就職先での業務の違い、資格職としての地位の低さ、継続的な自己研鑽の必要性、決して低くない離職率、資格を持ちながら実際には使用していない人の多さなど、職業としての暗部も存在します。
委託会社の栄養士、管理栄養士の立場の厳しさも現実の問題として浮上しています。この状況が、委託会社の栄養士になることを敬遠する傾向や、早期離職につながっているという指摘もあります。現場は人手不足に陥り、それがさらなる負担増加を招くという悪循環に陥っているのです。
このように、病院食を通して見える管理栄養士の現場には、ドラマでは十分に描ききれていない多くの課題や実態が存在しています。視聴者からは、これらの要素をより丁寧に描くことで、職業ドラマとしての深みが増したのではないかという指摘もなされています。
しまずい香奈演じる柿沼が支持される理由
しまずい香奈が演じる委託会社の管理栄養士・柿沼は、毒舌キャラクターでありながら、視聴者から意外にも強い支持を得ています。その理由は、現実の医療現場が抱える課題を体現する存在として描かれているからです。
柿沼は、限られた予算で献立を作らなければならない立場にあり、常にピリピリとした状態で描かれています。結から食事を残す男児のためにクミンを入れた特製カレーを頼まれるなど、特別な要望を受けるたびに嫌みを言い続けていましたが、その姿勢に視聴者は共感を示しています。
特に、夕方4時の時点で一人分だけ特別レシピのカレーを作るよう依頼された際の柿沼の反応は、多くの視聴者から「当然の態度」との評価を受けています。むしろ、現場の実情を考えれば優しい対応だという声すら上がっています。
視聴者からの支持の声は具体的です。「柿沼さんの大変さ、視聴者はわかってますよ~。調理師さんを束ねる大変さもあるだろうね」「柿沼さんのキャラも好きになってきた。思うことをストレートに出してるだけ。栄養士側の理想と調理側の現実」といった声が寄せられています。
また、「嫌みを吐き続けながら、ごちゃごちゃ文句たらたらこぼしながら、結局は協力してくれる、プロ意識持ってる柿沼さんにはまりそう」という評価も見られ、その職業人としての姿勢が高く評価されています。
特に病院での食事指導教室の実施に関して、「病気の悪化を防ぐために必要とはいえ、業務量増えるわけだから柿沼さんも大変だよね。ツンツンしてしまう気持ち、わかる」という共感の声も上がっています。
しかし、視聴者の中には、柿沼のキャラクターがこのまま貫かれることを望む声もあります。「他の人たちがあっさり結に屈服して軟化してキャラ変していく中で、最後までキャラ変しないでツンツンしたキャラを貫き通してほしい」という期待の声も見られます。
一方で、柿沼の態度に対して批判的な意見もあります。「気持ちはわかるけどあんな言い方はしなくてよい」「いちいちイライラ嚙みついて、職場に居て欲しくないタイプ」という指摘や、「イライラ噛みつかなくても言いたいことは言える」という意見も存在します。
また、この委託会社の人事判断を疑問視する声もあります。「この委託会社もよくこんな人を病院との連携係にしてるなあ」「会社の評価落としてもおかしくない」という指摘も見られます。
しかし全体としては、柿沼のキャラクターは「おむすびワールド」の中で「唯一の常識人」として評価されており、現実の医療現場の実態を反映した存在として、視聴者からの共感を得ることに成功しています。それは、単なる職場での対立構造を超えて、医療現場における管理栄養士の現実的な苦悩や葛藤を体現する存在として受け止められているからと言えるでしょう。
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